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2020.4.16
推しメンその1「浅草開化楼」

長い前文ですが

本ブログも1年。今までたくさんのつけ麺を食べてきましたが、つけ麺って本当に難しく、奥深い料理だということを最近改めて感じています。

世界中に存在する料理は、基本的に完成形があります。ピザ、パエリア、ハンバーガー、グラタン、ラザニア、油淋鶏、寿司、ビビンバ・・・。と、適当に思いついた世界の料理を上げてきましたが、どれも食べ方には正解があり、料理には完成形があります。凍らせたピザをスープにディップする料理はないだろうし、熱々のお寿司なんてのもないですよね。ピザは焼き上げたものをあったかいうちに食べるのが正解で、完成系であり、寿司は人肌程度に冷めたシャリにネタが乗り、ネタ側に醤油をつけて食べるのが正解で、完成系ですよね。

 

つけ麺には「これしかない!」というものがないんです。もちろん、店によってはこれしかない!というのもありますが、つけ麺界全体にはそういったものがないんです。スープは温か冷か、熱盛りか否かといった、根本的なものから、麺とつけ汁のどちらをメインにするか、トッピングはどうするか、どういう順番で食べるか、どのように食べるか、その自由度は半端じゃないです。これこそ、不完全を愛する日本のわびさび文化の極みではないかと、心の端っこで思ったりしています。

なんたって、麺とスープという2つの完全に独立した食べ物を、食べる直前に組み合わせるんです。その上、その組み合わせ方もあらゆるアプローチがあり、全てにおいて一長一短があります。

 

たとえば、麺は茹でた後水でしめますが、そのまま提供するとつけ汁が冷めてしまう。冷めないようあつもりにすると、麺が伸びてしまう。つけ汁が冷めたら焼き石を入れたりIHで温め直せたりするお店もあるけど、それはかなり手間がかかるし、断続的に火にかけることでつけ汁の味も変わってしまう。俺的には、冷めても美味しいスープを作るお店を推してます。

このつけ汁冷める問題は何年も前から言われていることで、各店いろんな方法でそれを打開しようとしていますが、これっていう正解はまだ見つかってない、というか、一生見つからないと思います。しかしながらそういう風に、一長一短ある中で試行錯誤しながらつけ麺を進化させ続けているこの業界全体が本当に好きです。

 

語り出すと止まらない性格も合間って導入だけでこれほど長くなるとは・・・。ここらで一旦切り上げまして、本題に移ろうと思います。これから、つけ麺の二種の神器のうちの1つ、麺にフォーカスをあてます。

 

製麺所ごとの特徴

面白いことに製麺所によって、かなり麺の”色”が違うんです。つけ麺を食べ歩くうちに、製麺所の特徴みたいなものが少しずつですがわかってきました。

最近はネオクラシカル系と呼ばれるつけ麺が代表するように、時代によってどんどん変わっていく流行りがあります。それに合わせて麺もどんどん新調し、時代にあった麺を作る製麺所もあります。その反対に、昔ながらの麺を大事にしている製麺所もあったり。

製麺する上で得意な麺、苦手な麺も、製麺所によって結構違うんですよね。ということで、今回から不定期ですが、コラムとして好きな製麺所についての記事を少しずつ書いていこうと思います。

 

浅草開化楼

第一回目に紹介したいのは、浅草を中心として有名店に麺を出荷している製麺所、浅草開化楼です。1950年創業の老舗の製麺所ですが、そのスタイルはなかなか個性的です。

 

面白い営業スタイル

HPを見てもらうとわかると思うのですが、なかなかのローカルっぷりなのです。しかしながら、なぜこれほどまでに有名なのか、気になりますよね。

浅草開化楼と聞けば、ラーメン通の方はやはり「不死鳥カラスさん(twitter)」が浮かぶのではないでしょうか。カリスマ製麺師という2つ名を持つこの方は、製麺師とプロレスラーの二足の草鞋を履く、ラーメン界の有名人であり、2000年以後の浅草開化楼ブームの火つけ人なのです。

 

与ろゐ屋

 

この頃、浅草開化楼では、カラスさんの元でつけ麺特化タイプの商品を模索したのだそう。

そして六厘舎やTETSUなどの00年代後半に誕生した有名つけ麺店が、ことごとく浅草開化楼のつけ麺を使ったのです。どんな営業をして、どんな形で浅草開化楼と契約に至ったのか、詳細は全く知りませんが、これにより今まで裏方だった製麺所に、ラーメン好きの関心が集まったのだそうです。

現在、六厘舎やTETSUはもう浅草開化楼の麺を使用していませんが、ここから浅草開化楼は伝説となるんですね。

 

小さい工場

浅草開化楼は、これだけ有名になった現在も小さな街の製麺所です。従業員は35人(HPから)。そして1日に製麺できるのは多くて4万玉程度。故に物理的に800店舗くらいまでしか契約ができないのだと、カラスさんのインタビュー記事にかかれてありました。

六厘舎やTETSUのように多店舗オープンしたお店では、浅草開化楼の麺を使うことができなくなってしまうのです。また、浅草開化楼では支店もないため、交通麺においてもかなりの縛りがあります。これによって必然的に契約において近場のお店が有利になり、遠い地方のラーメン店は契約が難しくなります。

これって、ものすごいブランディングになってるんですよね。やたら事業拡大せず、昔からの変わらぬ営業形態を続けることによって、浅草開化楼はその価値を高めていると言えます。以前、別の記事で台東区のつけ麺は偏差値が高い、と書きましたが、その偏差値をしたから押し上げてるのは間違いなく浅草開化楼だと思います。

 

神田 勝本

 

こだわりの麺

浅草開化楼はカラスさんをはじめ、製麺に関しての真摯さが半端じゃないです。直接会ったことはないのですが、SNSチェックしたりHPやインタビューを読めば読むほど、浅草開化楼の麺に対する真摯さが伝わってきます。仕事というより、プレイヤーなんですよね。

またカラスさんが顔になっているため、製麺所という大きく無機質な工場としてではなく、製麺をする人たちの集団として、そこにしっかりとした意思が介在しているように見えるんですよね。

 

そして実際、その麺は素晴らしい。かつて神田 勝本の記事でも書いたように、麺が美味しいんです。しかもそれは器用でどんなスタイルにも対応してるんですよね。太麺でも細麺でも、麺を主張することも、スープを押し出すためにも、見事に引き立てるんです。

 

最後に本当に個人的な好みの話ですが、浅草開化楼はコシのある縮れの細麺こそ最高だと思うんです。

 

ラーメン大至

 

最近の流行では決してないと思います。しかしながら、浅草開化楼の縮れ細麺はつけ麺界でも第一線であることは間違いないと思っています。古くからの知識や経験が凝縮されている、70年の歴史が誇る究極の麺です。

鶏ベースのあっさり醤油スープに、細めの浅草開化楼の縮れ麺。こんな店があればそれはもうQ.E.Dです。うまいに決まってる。

 

ら麺亭

 

ちなみに大好きなら麺亭のワンタンの皮。これも浅草開化楼特注なのであります。なんとパスタまで作ってるとのこと。今後の事業展開が非常に気になるのです。

浅草開化楼は、これからもどんどんと美味しい麺を世に生み出していくはずです。

咳戸
咳戸
「つけ麺食べたい!」のライター兼管理人。正装はファミ通のTシャツ。鶏清湯と風情のあるお店が好き。

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